身近な湘南アートの楽しみ

エンセンテンってご存知ですか? エンセンテンとは“沿線展”。去年から始まったイベントで、今年は9月1日から30日まで開催される、「江ノ電」と「沿線」と、「沿線のお店」がギャラリーになるイベントです。湘南には大勢のアーティストが活動しています。そんなアーティスト10人の作品が、江ノ電の駅やスキップ号の中吊り広告スペース、江ノ島駅の展示室、展望台などの展示スペース、そして沿線の10の会場で発表されるのです。
今年の参加アーティストは、おおばひろしさん、奥田ゆみさん、Onomaiさん、カオカオパンダさん、かとうくみさん、KANAさん、亀山和明さん、ジュジュタケシさん、八咲潮さん、山崎憲庸さんの10人です(あいうえお順)。名前は知らなくても、もしかすると作品はどこかで目にしたことがあるかもしれません。

去年、わたしもひとりで何か所か回りました。1日で10か所を回るのは時間的にムリでしたが、それでもカフェでコーヒーを飲みながら展示された作品をゆっくりと見ると、見慣れたカフェの風景まで違って見えるから不思議です。

去年、10人のアーティストのまとめ役として、第1回エンセンテン開催に向けて奔走されたのは、八咲潮さん。自身がBrushicsと呼ぶ、繊細で緻密で、すごく温かくてどこか懐かしい湘南風景は、見るたびに心を惹かれます。Portrailrと呼ぶ線画による人物画は、がらりと違った不思議な雰囲気が漂います。

さて、その八咲さんによると、エンセンテンが誕生したきっかけは「ミュージック・フロム・デイジーズカフェ」というアルバムのジャケット画を描いたことだったそうです(これは湘南の素敵な雰囲気にあふれたコンピレーションアルバムですよ)。完成したアルバムを見て、「湘南にはすばらしい絵を描くアーティストがたくさんいるんです。別々に活動しているアーティスト同士がつながりをもって、ミュージシャンたちがアルバムをつくるようなイベントができないだろうか」と思ったのだそう。そんなとき、たまたま江ノ電からスキップ号でアーティストの紹介をするという企画のお話があったらしいのです。せっかくだから車両の中吊り広告スペースだけじゃなくて、江ノ電の駅の広告スペースも使って、江ノ島駅を丸ごと使って、それからアーティストの個展も開いて……と、どんどんアイデアがわいたのだとか。「まず湘南エリアのアートの底辺をつくり、アーティストのことを身近に感じてもらいたいという思いがあります。そしてそれを世界へ羽ばたくための土壌にしたいですね。同じ志をもつアーティストは多いので、夢は大きいんです」と八咲さんはおっしゃっていました。八咲さんの作品は藤沢のカフェ1LDKで展示されます。

補足ですが、スキップ号というのは、鎌倉の四季が描かれた車両に江ノ電沿線の情報を載せた電車のことですね。SKIPとは、湘南の「Shonan」、鎌倉の「Kamakura」、情報の「Information」、振興の「Promotion」の頭文字を取ったものなんだって。このエントリーのために調べていて、初めて知りました。駅で江ノ電を待ってて、たまたま来た車両がスキップ号だったらちょっとうれしいですよね?

今年のエンセンテンで楽しみにしていることのひとつは、鎌倉のパタゴニアで開催される、切り絵作家の山崎憲庸]さんの作品展。こちらは初参加です。切り絵という手法で湘南の風景や人物を描いていて、作品のひとつひとつからアロハな香りが漂ってくるようです。憲庸さんの奥さんと友達ということもあり、何度か作品を見る機会はありましたが、今回は新作もたくさんあるそうです。「今回もね、彼の作品、すごくいいの。楽しみにしててくださいね」と、奥さんで布小物作家の小鳥美茂さん。本日9月1日にはオープニングイベントとしてお店の前のデッキでも作品を展示し、夫妻で19時までいるそうです。



またエンセンテンの関連イベントとして、9月15日(土)には江ノ島展望台で「ENO fes」が開催されます。10人のアーティストによるワークショップをはじめ、音と光の映像イベントです。



「美術鑑賞」と身構える必要がないのが、エンセンテンのいいところ。見慣れた沿線の風景や、カフェや雑貨屋さんの雰囲気すら、いつもと違って見えるから不思議。江ノ電の一日乗車券「のりおりくん」はおとな580円、子ども290円。期間中に買うとエンセンテン特製台紙つきです(江ノ電の回し者じゃありませんよ)。秋の一日、湘南の散策がてら、作品を見て歩くのは心和むひとときになると思います。




江ノ島電鉄のサイトから、展示会場などが載ったエリアマップがダウンロードできます。
※アーティストによって開催期間は異なります。
※会場が飲食店の場合、オーダーが必要になる場合があります。
※スキップ号の運行時間は、藤沢、江ノ島、鎌倉の各駅に掲示してあります。