さよなら

 <晴れ>

寒い。



郵便受けに年賀状数枚と戻ってきた年賀状1枚と、封書が一通。その封書の差出人の名字と住所を見て、すごく胸が騒いだ。急いで封を切ると、友人のお母さまからだった。わたしが暢気に出した年賀状への返事。友人は1年ちょっとの闘病の末、9月に亡くなっていたのだ。まったく知らなかった。
大学に入学してすぐ、学生番号が近かったことで仲良くなり、途中でわたしがコースを変えるまで同じ授業に出ることも多かった。2時間ぐらい離れた自宅から通っていた彼女は、よく「泊めてー」とわたしの下宿にやってきた。卒業するとき、「お世話になったから」とヨーガンレールの水色の素敵なバスタオルをくれた。そのバスタオルは肌触りがよいので、いまでも使っている。卒業してからも、わたしが結婚してからもときどき会っていたし、横浜に住んでいたときは泊まりに来たこともある。バックパックを背負ってアジアを旅していた彼女。いつもタバコをふかして、陽気で、飲兵衛で、ふっと居心地の悪そうな顔をしていた。ここ数年、年賀状だけのやりとりとなっていたことが残念でならない。封筒を開けてからずっと、ぐずぐず涙が止まらない。また会う日までさようなら。